pon*さんの回答にあるように、古英語(日本の平安期頃の英語)の時代には、
On the table is a book.
のように、場所+V+S の語順が普通だったようです。海外の研究者の調査では、古英語時代
①場所+V+S…75%
②there+V+S…15%
③S+V+場所…15%
のような割合で、これが中英語終わりごろ(15世紀半ばごろ)になると、
①場所+V+S…14%
②there+V+S…82%
③S+V+場所…4%
になっているそうです。
現代の英語でも、①のような英文は現れますね。
On the desk is a book.
このような語順の文が
There is a book on the desk.
という文になっていったということのようです。上の文だと、場所を示す on the desk があるわけですから、文頭の there に「そこに」の意味がないのはあきらかです。中英語期には、
There was no other boat there.
のように、先頭の there とは別に場所を示す there が存在する文が現れています。つまり、この時代になると、単に倒置ではなく文頭の there が独自の文法的役割を果しているということになるでしょう。
それが pon* さんの回答中の「話が始まるイントロ」のようなものということでしょう。そして、なぜそんなことをするかと言えば、それが sch***さんの回答にある、新情報、旧情報の話です。つまり、旧情報の代りに there を話のきっかけとしておくわけです。
これは日本語でもそうじゃないかと思うのですが、聞き手や読み手が知らないことを、いきなり文の先頭にもってこない傾向が言葉にはあるということです。他の言語はよくわかりませんが、例えば日本語だと、
(むかしむかしあるところに、)おじいさんとおばあさんがいました。
カッコの部分が無いと、変というか、唐突なんですよね。落語なんかでも「えー、…と言えば~でございますなー。その…ですが...」てな感じで話が始まって最後に落ちがあるわけですが、その落ちが新情報みたいなもののような気がします。
聞き手、読み手がすでに知っている旧情報から話を初めて相手の関心を呼び込み、それから新しい情報を伝える。そこは、Universal Grammar と言えなくもない気がしますね。
日本語では今でも「どこどこに~がある」という順で言いますが、英語も昔はそうだったのかと知ると「英語と日本語に同じ遺伝子があるのかも」と思いたくなりますね。
there のような英文のイントロ的役割は、天候や時間を表す it や it is … that S+V などの it にもあるのではないかという意見もあるようです。
開拓社から出版されている『文法化する英語』(保坂道雄 著)でそういった話が語られています。