必ずしも良好とは言えず、注意深い評価が必要な状態です。
慢性心疾患を持つ犬において、心拍数が低下して安定しているように見える状態は、一見すると心臓が落ち着いている、治療がうまくいっていると捉えられがちですが、実際にはそれが必ずしも良好な状態を示しているとは限りません。
まずは心拍数の低下が適切な治療効果によるものなのか、過度な抑制や心機能低下を反映しているのかを、慎重に見極める必要があります。
慢性心疾患の治療では、β遮断薬やジゴキシンなどの心拍数を調整する薬剤が用いられることがあります。
これらの薬剤は心拍数を適度に下げることで心臓の負担を軽減し、心筋の酸素消費を抑える効果がありますが、用量が過剰であったり、病態が変化したりすると、心拍数が過度に低下し、かえって心拍出量(心臓から送り出される血液量)が減少してしまうことがあります。
心拍出量が低下すると、全身への酸素供給が不足し、倦怠感、運動不耐性、虚脱、食欲不振、四肢冷感などの臨床症状が現れることがあります。
徐脈(心拍数の過度な低下)が持続すると、失神や意識消失といった重篤な症状を引き起こすリスクもあります。
心拍数が低すぎる状態では、代償的に心臓が一回の拍動で多くの血液を送り出そうとするため、かえって心臓への負担が増す場合もあります。
慢性心疾患は心拍数の数値だけで判断するのではなく、犬の全身状態、活動性、呼吸状態、粘膜色、毛細血管再充満時間(CRT)、血圧などを総合的に評価することが重要です。
心拍数が低くても元気で食欲があり、運動にも耐えられるのであれば適切な範囲内と考えられますが、元気消失や虚弱感が見られる場合は、心拍数が過度に抑制されている可能性を疑い、心電図検査や血圧測定、心エコー検査などでさらに詳しく評価する必要があります。
慢性心疾患の管理では、安定しているという外見的な印象にとらわれず、定期的な検査と臨床症状の観察を通じて、心機能が適切に維持されているかを継続的に確認することが不可欠です。
かかりつけ獣医師と密に連携し、心拍数の変化と犬の状態を照らし合わせながら、治療内容を適宜調整していくことが、長期的な管理において重要となります。