日本史が好きで動画や本を読むのですが、よく例えばですが、田中日向守太郎などの名前が戦国時代や江戸時代で見かけます。大名であれば〜守というのが理解できるのですが大名の家臣にもついていて家臣なのによくそんな名前がつくのだなと思います。旧国名は66カ国しかないのにです。なぜかわかるかたお願いします。長くて読みにくく、意図が伝わらなかったらすみません

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2026-04-07 06:20

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たとえば、家康の家臣に「伊奈備前守忠次」という名前の人がいます。
なぜ関東が領地の徳川の家来が、備前守という名前なのか?
備前守というのは「備前国(今の岡山県の半分)の国司」という官職(朝廷から任命される職務に対応した肩書)です。
しかしもちろん、伊奈備前守忠次は備前の国司でもないし備前に領地も持っていません。備前守は、実際の彼の仕事(関東郡代)とは全く関係ない、つまり名目だけの肩書です。

武士の名乗る「何とかの守(かみ)」は、多くの場合、本当の支配地や居住地とは関係ない地名です。
なんでか。
たとえば、前田利家の話をしましょう。
彼は織田信長の家臣で能登の領主だったころ、「土佐守」(とさのかみ)だったそうです。
なんで? 能登守じゃないの? と不思議に思われますが。
この場合の「土佐守」は、単なる身分ランクを表す「身分証明書の記号」のようなもんです。

平安時代、朝廷に力があった時代には、身分ある者はみな、天皇から「官位」を貰っていました。
「官」は仕事上の地位(ポスト)で、「位」は役人としての職級(ランク)、これが一組になっています。
たとえば総理大臣級の高級貴族は「従一位太政大臣」、中級貴族で地方の県知事(というより実質は税務署長+警察署長)に任命されると「従五位下土佐守」といった名前を貰うわけです。
「従五位下」が位、「土佐守」が仕事の名前です。
朝廷というのは官僚組織だから、ポストとランクは必ずセットです。位を受けるときは、何らかの官(仕事)をしなければなりません。
それは朝廷の全国支配が事実上全く機能しなくなっている戦国、江戸時代でも、形式だけ残っているわけです。

平安時代までは、土佐国(いまの高知県)の警察と徴税の権限は、「国司」の長官、「土佐守(かみ)」が持っていました。
しかし、鎌倉幕府は「守護(しゅご)」という役職に武士を任命し、各国に派遣しました。「1185年、守護地頭の設置」てやつです。
ややこしいですが。「土佐国守護」は「土佐守」とはまったく別の、幕府が新たに作ったポストです
幕府派遣の「守護」と、朝廷派遣の「国司(守)」が並列していたわけですが、やがて、守護が国司の仕事を全部奪ってしまうようになるのは当然の流れで。
そのため、「守」は仕事のない有名無実の存在になりますが、依然として制度だけは残っていて、誰かが名前だけ任命されている、という状態になります。

戦国時代ごろになると、大名や武将たちが、ハク付けのために、この「守」の肩書を勝手に名乗ったりするようになります。
京都の朝廷にも、本来こういうことを一括取次する幕府(将軍)にも、すでに勢力がないので、本当かどうか判定する人がおらず、名乗り放題になるのです。
これ、僭称といいます。
実際に一国どころか一郡を治めているわけでもなくても、まあ名乗るだけなら名乗っても勝手、になってしまいました。
とはいったものの、自分のいま住んでいる土地の「守」を名乗るのは、あきらかに図々しすぎます。
なので、勝手に名乗るなら、どこか遠いところの「守」を名乗るのが普通なのです。
「いや、ウチの先祖はもともと土佐の国司でな、あっちのほうから流れてきたんだよ」
とでもいえば、もともと出自なんぞ怪しい戦国武将ですから、もっともらしく聞こえます。

この「何何の守」という肩書は、諱(いみな=本名)を呼ばないのがしきたりの日本では、「通称」がわりで、お互いに呼び合うのに使われるようになります。
たとえば「利家どの」などとは絶対に呼びません。親しい者は「又左衛門」とか「又左」と通名で呼びますが、敬意を払う場面では「土佐守」「土佐どの」などと呼ぶのです。

呼び合うためですから、隣のヤツとは違う名前にしなければ意味ありません。
尾張国に住んでいる武将がみんな「オレは尾張守がいい」と言いだいたら不便でしょうがないですから、みんなそれぞれ適当に遠慮して、遠くの国の守を適当に名乗る訳です。先祖はあっちのほうの国司だったんだ、とか適当な理由をつけて。
こうして「何の守」という名前は実際の領地とは全然関係ない、というのが定着していくのです。

いっぽう、実際に一国の主となったものは、京都の朝廷に献金して、正式に「従五位下三河守」に任命してもらったりします。京都の天皇には、まだ「身分証明書発行所」としての機能が存在したわけです。

さらに、信長、秀吉が京都の天皇を抑えて統一事業を推し進めると、大名・武将に一括して「従五位下ナントカの守」の肩書を貰ってやるようになります。「官」と「位」は必ずセットなので、「おまえらは、みんな出世して貴族の一員になったんだぞ」ということで、従五位下の位と、そのシルシである「何何の守」という名乗りを、一律に貰ってやります。
ここで「どこの土地の名前を貰えるか」は、適当な場合が多いです。現実に治めている土地の名前をやってしまっては、あとで配置転換しづらいじゃないですか。

家康の「三河守」のような場合もありますが、これは家康が先祖代々三河の領主だったから、特に認めてもらった、と考えてください。
ですから、前田利家のように、あくまで信長の部下として能登を任されている者は、先々どうなるか分からないですから、「能登守」ではなく、ぜんぜん違う「土佐守」という肩書を貰うわけです。これは「私は従五位下ですよ、一応貴族階級ですよ」という証書に過ぎません。

パスポートの記号にある文字がAだろうがXだろうが名前とも出身地とも関係ないのとおんなじです。AよりXがいいなんてことがないのとおなじで、何の守でも基本はランクの違いはありません。

この「武士の「何の守」というのは、基本は領地とは関係ない」というこの仕組みは、江戸時代の大名・旗本にも受け継がれています。同時代に「信濃守」が何人もいたりしますが、ただの肩書、記号にすぎないので、構わないわけです。

ただし「薩摩」「安芸」「加賀」のように、現にその一国をまるごと治める「国持大名」がいる場合は、他の者はその名前を名乗れません。「土佐守は、土佐一国を治める山内氏以外は名乗らなくなります。これは、江戸時代の話です。

ちなみに、この「従五位下を表すパスポート記号」には、「○○守」のほかに「△△頭」というのもありますね。○○には国名が入りますけど、△△には京都朝廷の役所の名前が入ります。

たとえば「浅野内匠頭」というのは、京都の宮中の仕事をする「寮」の長官です。たくみのかみ。同じカミでも、国司は「守」、寮の長官は「頭」と書きます。

将軍直属の家来である「大名」と「旗本」には、幕府から朝廷に奏上して、ほぼ全員一律に「従五位下」の位が与えられます。これは昇殿できる最低ラインの位です(つまり、ギリギリ貴族の仲間、ということです)。
御三家・御三卿、国持大名、大老や老中、高家などの例外を除けば、石高などに関係なく横並びです。

「律令制」というのは官僚制度ですから、位(ランク)をもらうということは、それに対応する仕事(ポスト)がもれなくついてくる建前です。
従五位下の位には、それに対応した「官」がついてきます(あわせて官位、です)。
京都朝廷には、そんな役所も組織もすでにありませんから、完全に名目だけです。

「浅野内匠頭」のタクミノカミというのは、「内匠寮」の長官です。
京都の宮廷で道具の調達・管理をする部署、らしいです。
あえて現代の会社にたとえれば「庶務二課長」程度の役でしょうか。
もちろん、そんな役場は現実にはもうありませんから、浅野が京都に出仕して仕事をするわけではありません。

ほかに「寮」系の職名で有名なのは「酒井雅楽頭(さかい・うたのかみ)」とか「井伊掃部頭(いい・かもんのかみ)」などいますね。
どんな役目の肩書きからは、字面で想像してください。いずれにしても名目だけです。
原則、実際の領地とも家の由来とも関係ない肩書きが与えられます。

島津氏は薩摩守、伊達氏は陸奥守など、「国持大名」は実際の領地に因んだ官名が与えられます。
しかし、大多数の大名や旗本は適当に領地とは関係ない地名、関係ない仕事名が割り振られます。
へたに実際の領地とか昔の由来とかとは関係ないほうが、要らぬ争いのタネにならなくていいのです。

例えば、信濃国には大名が沢山います。
そのうち誰かだけに信濃守の肩書をあげたら、他の大名がいじけるでしょう。
かといって、みんなを信濃守にしたら、隣もその隣もみんな信濃守ってなって、不便でしょうがない。
小学校でクラス全員がタケシ君のようなもんです。
だから、信濃国の大名たちには全然関係ない国の名前をやって、全然関係ない遠くの大名に信濃守の名前をやったりするわけです。

旗本で「従五位下」を貰えるのは奉行などの役がつくあたり以上の身分ですが、高級旗本も身分だけなら大名と同列です。
よく三百諸侯なんていいますし、旗本も同じくらいはいると考えれば、「〇〇守」「××頭」の全部をあわせても足りません。
つまり、同時に同じ「〇〇守」「××頭」が何人もいました。
同時期に「信濃守」が何人もいても、誰も長野には領地はありませんし、むろん分けて持っているわけでもありません。

「〇〇守」「××頭」は、単なる肩書きというよりも、名前と同様に使われます。
「水野忠邦様」などと本名(イミナ)は絶対に呼ばず、「水野越前守様」または単に「越前どの」などと、官名で呼ばれるのが普通です。
ですから、同姓同名ができないよう、上役や相役と同じ名前にならぬよう、隣同士の大名が同じ官名にならぬよう、などのいくつかの配慮がされたうえで決められます。

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