「義経記」に限らず、一般に軍記物語では、「軍」は基本、「いくさ」と読みます。「戦(いくさ)」と意味は同じです。軍記物語の作者や筆写者が「いくさ」に「軍」を当てて書くことが多かったのです。
お尋ねの本文は義経記巻4「土佐坊義経の討手に上る」ですが、テキストによっては「大戦」となっています。
【汝が下部どもの、「明日、京都は大戦にてあらんずるぞ。」と言ひけるぞ。】
保元物語、平家物語には、「大戦」「大軍」ただの一例もありません。
平治物語にも、「大戦」「大軍」ともに皆無ですが、三字熟語「大軍陣」が一例のみありますが、読みも不明で、別の例でしょう。
【その外、清げなる雑色四、五人召し具して、大軍陣を張りて、所々門々を堅く守護しけるを事ともせず、】(平治物語1「光頼卿参内の事」)
源平盛衰記には、「大戦」は皆無、「大軍」は1例のみで、「たいぐん」です。
【勾践、後に大軍を起こして遂に呉王を亡ぼしけり。】(源平盛衰記巻2「会稽山の事」)
太平記には「大軍」が26例あり、すべて「たいぐん」で、用例は源平盛衰記の上の例と同様です。「大戦」は皆無です。
以上から、古文ポラリス2の「大軍」の読みを問う設問は、極めて例外的な用例の読みを問うものです。「軍」を「いくさ」と読む読みを問うなら、用例は無数にあり、軍記物語の常識を問う意味ではまともな設問です。「大軍」とある場合、軍記物語では、「大軍(たいぐん)」が常識的な読みです。
率直に言って、ろくでもない設問です。「軍(いくさ)」という読みが、軍記物語では多用されるということを、この設問から学ぶにとどめましょう。
最後に、「おほいくさ」は、「大規模な戦闘」という意味です。