犬の横隔膜ヘルニアは、横隔膜の開け口が大きくなることで内臓が胸腔に押し出されることを指します。胸腔内へ脱出した臓器(主に胃と腸)は、肺の拡張や換気血流比(V/Qバランス)に大きく影響を与えます。
まず、肺の拡張につながる影響は、臓器が胸腔を占拠することで肺の容量が圧迫されます。これにより肺が適切に伸縮できず、換気能力が低下します。特に深呼吸や運動中にこの症状は顕著になります。
次に、V/Qバランス(換気血流比)への影響について説明します。V/Qバランスは、肺の一部が持つ空気と血液の交換率を指します。正常な肺では、空気と血液の交換が均等に行われますが、横隔膜ヘルニアにより胸腔内に臓器が押し出された場合、その部位の肺組織が圧迫され、結果として血流がある程度通じるが空気が十分に通じない状態になります。これはV/Qバランスの低下、つまりその部位での血液の換気効率が低下する現象を意味します。これが長期間続くと、その部分の肺組織は萎縮することがあります。
これらの影響から、診断される犬は以下の臨床症状を経験することが多いです:
1. 呼吸困難:特に運動時やストレスを感じる際に顕著です。
2. 喘息音:特に胸腔内に臓器が押し出された肺の上部を聴診機で聴くと、喘息音が聞こえます。
3. 心拍数の増加:呼吸困難が心拍数を上昇させる可能性があります。
4. 食欲不振:特に胃が胸腔内に押し出された場合、食欲不振や嘔吐が起こることがあります。
5. 休克:危重な場合、これらの症状は休克を引き起こす可能性があります。
これらの症状が見られた場合、迅速な治療が求められます。治療は手術を伴うことが多いですが、早期診断と治療により、多くの犬は良好な結果を得ることができます。