率直なご意見ですが、国際的な宇宙開発の常識という観点から見ると、いくつか前提が異なっているように思われます。
まず大前提として、ロケット開発において「失敗」は例外ではなく、設計思想の一部として世界中で受け止められています。
NASA、ESA、spacex、Arianespace、いずれも開発初期には高い確率で失敗を経験しています。とくに新型ロケットの初号機・数号機が完全成功する方が、むしろ国際的には稀です。
H3の失敗も、「三菱が無理」という能力論で片付けられるものではなく、
コスト削減・部品の国産化・設計簡素化という“挑戦的な設計変更”を行った結果として、想定内で起こりうる段階的トラブルに分類されます。
これは国際社会では「フェイル・ファスト(早く失敗し、次で直す)」という考え方に近く、失敗を隠すよりも、原因を公開し修正する姿勢の方が信頼されます。
また、H2A/H2Bの継続使用についてですが、これは国際競争力の観点では現実的ではありません。
H2Aは「極めて成功率の高いロケット」ですが、その成功率は高コストと引き換えに成り立っています。
現在の国際市場では、spacexを筆頭に「多少の失敗を織り込んででも、安く・早く・量産する」方向に完全に舵が切られています。
H2改を延命することは、技術的には安全でも、国際市場からは確実に取り残される選択になります。
次に、開発拠点が寒冷地にあることへの懸念ですが、これも国際的にはすでに解決済みの課題です。
ロシア、カナダ、北欧、アメリカ北部など、寒冷地でのロケット・航空・半導体開発は世界中で普通に行われています。
温度管理・潤滑油・材料設計は、環境条件を前提に最初から設計されるもので、「寒いから無理」というのは現代の工学では成立しません。
もし寒さで重大事故が起きる設計であれば、それ自体が国際基準を満たしていないということになります。
半導体についても同様で、静電気や電力供給は立地の問題ではなく、設備設計とインフラ投資の問題です。
実際、寒冷地は温度管理がしやすく、データセンターや半導体工場に適している側面すらあります。
総じて言えば、
「失敗を理由に開発を止め、旧世代に戻る」という判断は、国際社会では「技術的撤退」と受け取られます。
ロケット開発とは、失敗を前提に、原因を潰し、成功率を積み上げていく長期戦です。
H3を一時保留しH2改に戻ることは、短期的な安心感はありますが、
長期的には「日本は自力で次世代ロケットを作る意思がない」と世界に宣言するに等しい選択になります。
国際社会の目線で見れば、
H3は失敗したから止める対象ではなく、失敗したからこそ続ける対象
――これが、いまの宇宙開発の共通認識だと言えるでしょう。