神話の人物たちが実在したかどうか、考古学の発見もあって気になりますよね。
実在可能性はあるか
大国主命や健御名方命、ヌナカワ姫については、現在の研究では
「モデルになった首長層や一族はいた可能性が高いが、個人として実在したかは分からない」
という扱いが一般的です。
出雲地方では、荒神谷遺跡の銅剣358本や銅矛、加茂岩倉遺跡の大量の銅鐸など、弥生中期〜後期の強大な権力を示す遺跡が相次いで見つかっています。
これらは『古事記』『日本書紀』『出雲国風土記』が伝える「出雲の国譲り」神話と時代・地域が重なるため、
「出雲には実際に強力な政権(王権と呼べるかは議論中)があり、その記憶が大国主命像に反映された」
と考える研究が多くなっています。
ただし、個人名としての「大国主命」「健御名方命」を、特定の歴史人物に同定できる史料は見つかっていません。
あくまで「神話の背後に実在の勢力や首長はいたが、神話の姿そのものを歴史人物とはみなせない」という段階です。
国譲り神話と考古学
国譲り神話については、もともと「ただの作り話」と見なす風潮が強かったのですが、
出雲での大規模な青銅器遺跡の発見以降、評価が変わりつつあります。
荒神谷・加茂岩倉などの出土状況から、「出雲に広域的な祭祀・政治の中心があった」ことはほぼ確実とされます。
そのため現在は
「大和政権と出雲勢力の権力関係の変化が、国譲り神話として物語化されたのではないか」
という「歴史的事件を神話が象徴している」と見る説が主流です。
ただ、「いつ」「どの勢力」と「どの勢力」の関係を反映しているか、については諸説あり、確定はしていません。
文献と遺跡を対応させる試みも進んでいますが、まだ決着はついていないというのが現状です。
ヌナカワ姫の位置づけ
ヌナカワ姫は、越(現在の新潟・富山あたり)と出雲を結ぶ婚姻譚のヒロインで、
翡翠(ヒスイ)文化と結びつけて語られることが多い女神です。
糸魚川周辺の翡翠産地や古代の交易の実態から、
「日本海交易を担った有力女性、あるいはその家系の記憶が神格化されたのでは」
という解釈もあります。
しかしこちらも、「ヌナカワ姫」という個人に対応する確実な史料はなく、
「交易ネットワークや婚姻関係といった社会的現実が神話化された存在」とみなすのが研究的には無難です。
まとめると
出雲や越の地域に、神話が語るような強大な勢力や広域ネットワークが実在したこと自体は、考古学的にかなり確からしい。
その記憶が、「大国主命」「健御名方命」「ヌナカワ姫」といった神々の物語に反映されている可能性は高い。
ただし、神話に描かれる姿どおりの「個人としての実在」を証明できる資料はなく、「十分に考えられる」とまでは言い切れない、というのが現在の学界のバランスです。