免疫反応オーバービュー(細菌感染編)
自然免疫の初動と物理・化学的障壁 細菌が体内に侵入しようとする際、まず上皮細胞が産生する抗菌ペプチド(ディフェンシンなど)が化学的バリアとして機能する。
これを突破した細菌に対し、組織に常駐するマクロファージやマスト細胞が、その表面にあるPRRs(TLRやNLRなど)を用いて細菌特異的な構造であるPAMPsを感知する。
同時に、細菌表面の多糖類などをきっかけとして、抗体を介さない補体の第2経路およびレクチン経路が即座に活性化される。
炎症反応の増幅と白血球の動員 PRR刺激を受けた細胞は、IL-1β、TNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインを放出する。
血管の変化: マスト細胞からのヒスタミンや、補体活性化で生じたアナフィラトキシン(C3a, C5a)が血管内皮細胞に作用し、血管拡張と透過性亢進を引き起こす。
接着と遊走:TNF-αやIL-1βの刺激により、血管内皮にE-セレクチンやICAM-1などの接着分子が発現する。血流中の好中球はこれらにトラップされ(ローリング・接着)、血管外へ遊走する。
走化:強力な走化性因子であるCXCL8(IL-8)やC5aの濃度勾配に従い、好中球や単球が感染局所へと集結する。
好中球・マクロファージによる殺菌
炎症初期の主役である好中球は、C3b(補体)やIgG(獲得免疫成立後)によるオプソニン化を受けた細菌を強力に貪食する。
殺菌機序:貪食した細菌に対し、活性酸素種(ROS)、ファゴリソソーム内の加水分解酵素、およびNETs(好中球細胞外トラップ)による網状のDNA放出によって、細胞外の細菌をも絡め取り殺菌する。
補体の直接攻撃:グラム陰性菌に対しては、補体反応の最終産物であるC5b-9(膜侵襲複合体:MAC)が細菌の細胞膜に孔を開け、直接的に溶菌へと導く。
獲得免疫への橋渡し(抗原提示) 局所で抗原を取り込んだ樹状細胞は、サイトカインの刺激で成熟し、ケモカイン受容体CCR7を発現してリンパ管へ入る。
リンパ節のT細胞領域へ移動した樹状細胞は、分解した細菌ペプチドをMHCクラスII上に提示し、ナイーブCD4+ T細胞と接触する。
ここで、TCRを介した抗原認識に加え、CD80/86とCD28、CD40とCD40Lなどの共刺激(コースティミュレーション)が成立することで、T細胞は初めて完全に活性化される。
T細胞の分化とB細胞のヘルプ
周囲のサイトカイン環境(IL-6、IL-21等)により、
一部のT細胞はTfh細胞(濾胞性ヘルパーT細胞)へと分化し、B細胞領域(濾胞)へと移動する。
一方、B細胞はリンパ節に届いた未変性(分解されていない)抗原をBCR(B細胞受容体)で直接認識し、内取・処理してTfh細胞へ提示する。
濾胞外反応(初期): まず濾胞外で、迅速にIgMを産生する短命な形質細胞が作られ、早期防御を担う。
胚中心反応(本命): その後、B細胞はTfh細胞からの強力なヘルプ(CD40LやIL-21)を受け、胚中心を形成する。
ここで酵素AIDの働きにより、体細胞超変異(抗体の結合力を高める)と、クラススイッチ(IgG、IgA、IgEへの変更)が行われる。
抗体による最終排除 高親和性を獲得した形質細胞(プラズマ細胞)は、大量の抗体(主にIgG)を放出する。
中和:細菌の毒素や付着因子に結合し、無力化する。
補体古典経路:抗原に結合したIgGやIgMがC1qを活性化し、補体反応を爆発的に加速させる。
Fc受容体介在性貪食:好中球やマクロファージのFc受容体が、細菌にくっついた抗体をキャッチし、貪食効率を劇的に向上させる。