私なら、大切な人には迷わず「裁判所事務官」を勧めます。
理由は、両者の求められる適性が「真逆」であり、銀行の営業職は精神的な摩耗のリスクがあまりにも高いからです。
まず、都市銀行の営業職に求められるのは「狩猟型」の適性です。
ここでの正義は「数字(利益)」です。過大なノルマを達成するために、顧客の懐に飛び込むコミュニケーション能力、断られても折れない鋼のメンタル、そして他者との競争に勝ち抜くことに快感を覚えるアグレッシブさが必要です。「雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す」と揶揄されることもあるように、時には情を捨ててビジネスに徹する冷徹さも求められます。高給ですが、常に成果というプレッシャーに晒され続ける、非常にストレスフルな環境です。
一方、裁判所事務官に求められるのは「管理・守護型」の適性です。
ここでの正義は「法と手続きの正確性」です。1円、1分のズレも許されない緻密さ、法律というルールに則って淡々と、しかし確実に業務を遂行する事務処理能力が求められます。また、裁判という紛争の場において、感情に流されず中立公平を保つ冷静さと、当事者の人生の岐路に立ち会う誠実さが必要です。ノルマに追われることはなく、組織としての規律を守れる人が評価されます。
私が裁判所事務官を勧める最大の理由は、「長期的な安定と精神的健康」です。
銀行業界は現在、ネット銀行の台頭や店舗削減など構造改革の過渡期にあり、将来の不確実性が増しています。営業職として使い潰されるリスクも否定できません。対して裁判所は、国家権力の一翼として身分が強固に保証されており、ワークライフバランスも整えやすい環境です。大切な人には、数字に追われて心をすり減らすよりも、「法の番人」を支えるという誇り高い仕事で、穏やかかつ堅実に人生を歩んでほしいと願うからです。