「103万円の壁」の基準が178万円へ引き上げられることで、主婦の方が働きやすくなるのは間違いありませんが、企業側が「諸手を挙げて雇いやすくなるか」と言われると、実はまだ大きなハードルが残っています。
最大の懸念は、税金の壁が上がっても、社会保険の「106万円・130万円の壁」がそのまま放置されている点です。所得税が非課税になっても、一定以上の収入を得た瞬間に月数万円の社会保険料が発生する仕組みが変わらなければ、結局のところ多くの主婦の方は「社会保険料を払ってまで働くか、それとも106万円未満に抑えるか」という、以前と変わらないジレンマに直面し続けます。
また、企業側にとっても、単に労働時間を延ばしてもらうだけでは済みません。従業員が社会保険に加入すれば、会社側も同額の保険料を負担しなければならないため、人件費が跳ね上がることを恐れて、あえて「社会保険に入らなくて済む範囲」での雇用に留めようとする動きも予想されます。
つまり、税制改正によって「103万円を気にして12月にシフトを削る」という年末の光景は減るかもしれませんが、労働現場が根本的に人手不足を解消し、誰もが自由にフルタイムで働けるようになるには、社会保険制度側の抜本的な改革が不可欠だというのが、冷徹ながら現実的な見方です。