日本で人気になっているメジェドとされるイメージは、壁画ではなく死者の書(グリーンフィールド・パピルス)に描かれた2つの図像です。
最近、アンクエフエンコンスのパピルスにも2つの図像があると言われるようになり、こちらの図像は胴が短く脚が長い。
いずれにしてもメジェドは、正体不明の超マイナーな神ですから、図像化されている例はきわめて珍しいのです。
その希少な「メジェド」像は、いずれも足は地に着けたポージングになっていて、添付されているような片足を上げたポップな姿は見られません。
また、今後もそのような図像が発見される可能性はゼロに近いと思います。
「死者の書」は宗教文書であり、それを描く事そのものが宗教的な行為ですから、勝手に面白おかしいアレンジを加えて制作することは、あってはならないことだったのです。
同じ宗教美術として、たとえば仏像に当てはめて考えてみると、あの頭のくるくるした螺髪はセンス悪いから、今風のカッコいいヘアスタイルにして制作しよう――みたいなことは現代ですら、ほぼありえないですよね。
つまり、神々を描く際、古代エジプトでは「定型」が最も重視されたのであり、そこに個人的な「自己表現」が紛れ込む余地は、ほとんど無いのです。