犬の狂犬病における集団免疫の閾値は、理論上は基本再生産数(R0)から導かれますが、実際の運用ではそれだけでは決まりません。
野生動物(キツネ、コウモリなど)が感染源として関与する場合や、輸入症例の流入リスクが高い地域では、感染の外部供給が持続するため、同じR0でも必要なワクチン接種率はより高く設定されます。
飼育犬の登録漏れや接種の偏在(地域差)といった実務上の不均一性も、実効的な閾値を押し上げる要因になります。
日本のように国内での常在感染がない状況では、目標接種率は「国内伝播を止める閾値」というより、「侵入時に即時封じ込めが可能な水準」として設定されます。
具体的には、輸入例が発生しても二次感染を最小化できること、接触犬群の中で迅速にリング状の免疫帯を形成できること、監視・摘発体制と組み合わせてアウトブレイクを拡大させないことを前提に決められます。
単一の数値に依存するのではなく、外部からの侵入確率、野生動物リザーバーの有無、接種の均一性、監視体制の強度といった疫学的条件を織り込んだ安全余裕込みの接種率として設計されるのが現実的です。