基本的にユダヤ人が嫌われた理由は時代によって
異なります。
1.古代世界
古代世界においては多神教がスタンダードでした。
そして、多神教同士の文化なら、異教の神を自分
たちの宗教の同種の神と同じものと考えるため、
異教の神であっても敬うのが普通でした。
例えばギリシア神話の主神ゼウスはローマ神話の
主神ユピテルと同一視され、ギリシア神話の美の
女神アフロディーテはローマ神話の美の女神ヴィー
ナスと同一視されるというような感じで、多神教同士
なら、神の習合のような現象が起こるのです。
ですから異教の神であっても自分たちの宗教の同種の
神扱いして敬うのが普通のことだったのです。
ところが、ヘブライ人はユダヤ教という一神教を奉じ
たため、自分たちの神以外は神と認めず、異教の神を
神として敬いませんでした。多神教文化の人々から
すれば、ヘブライ人は自分たちの宗教の神々に敬意を
払わない不遜な奴らということになってしまいます。
多神教徒たちからすれば、自分たちの宗教を馬鹿に
されたのも同然ですから、当然、面白くありません。
ですから、古代世界でユダヤ人は多神教異民族から
拒絶される傾向がありました。特に多神教の古代ギリ
シア哲学者たちの多くはヘブライ人を毛嫌いし、批判
しています。
「・極度の選民思想で周囲から変な目で見られた」
というのは、厳密には一神教と多神教の違いから
ユダヤ教徒が多神教の神々に敬意を払わないことから
毛嫌いされたのです。
2.キリスト教以降
キリスト教ができると、伝統的なユダヤ教徒の間で
キリスト教は異端視されます。イエスをメシアとして
認めないというのがユダヤ教の立場でした。キリスト
教は、いわばユダヤ教内の異端派セクトという立ち
位置でした。
このため、キリスト教徒がヘブライ人への布教を進める
と、それに対抗してユダヤ教徒はキリスト教の布教を
邪魔しますし、ユダヤ教からキリスト教への改宗者も
それほど増えなかったため、キリスト教徒はヘブライ人
以外の異民族に布教を積極的に行うようになり、やがて
ローマ帝国での布教が成功し、帝国の国教化していきます。
「・イエスを処刑に追い込んだ事でキリスト教徒から恨まれた」
というのは、実際にはヘブライ人(=ユダヤ教徒)がイエスを
メシアと認めない=キリスト教の教義の根幹を否定している
ことから、ユダヤ教徒がキリスト教徒から嫌われるようになっ
たということです。但し、元々キリスト教はユダヤ教内の分派
ですから、初期キリスト教徒たちは皆、民族的にはヘブライ人
でした。
キリスト教に改宗しなかったヘブライ人は、イエスを神の子
(メシア)として受け入れなかったことから、キリスト教側から
神を受け入れなかった民族と否定的に見られているのです。
3.中世以降
キリスト教徒は同じキリスト教徒に対して利子を取って金を
貸してはいけないというキリスト教のルールがありました。
また、ユダヤ教徒は土地を所有してはならないという法律が
当時のヨーロッパにはありました。中世の時代は農業社会
ですから、土地を所有して農業を行うことができないユダ
ヤ教徒は、必然的にそれ以外の職業に就くしかありません
ですが、他の職と言ってもギルドには加入できませんから、
生活の糧を得ることは困難でした。そこで、ユダヤ教徒なら
キリスト教徒に利子を取って金を貸すことができることから、
ユダヤ教徒は生活のために金貸しになる者が多かったのです。
当然、借り手はキリスト教徒です。金の借り手が返金したく
ないので、貸し手を恨んだり、憎んだりすることは当然起こ
ります。ユダヤ教徒に莫大な金額を借りている借り手には
貴族や都市の有力者などが多く、金を返済する当てがない
と、借金を帳消しにする方法として、ユダヤ教徒に対する
暴動を扇動することが多かったのです。
例えば、ユダヤ教徒が井戸に毒を入れたとか、キリスト教徒の
子供をさらってユダヤ教の儀式のために殺しているとかいう話
をでっちあげて、それを広めることで反ユダヤ意識を民衆に
植え付け、反ユダヤ暴動を引き起こしたのです。
この結果、その地域のユダヤ人コミュニティが壊滅し、金貸し
も殺されたり、逃げ出したりすれば、借金も返さなくて済む
というわけです。
つまり、「・金融業に携わった事で卑しく思われた」という
よりも、借金をした社会の上中流層が借金の返済を逃れる
ために、意図的に反ユダヤ意識を煽って暴動を引き起こした
というのが実際のパターンです。
かくしてユダヤ教徒についての悪意ある噂や迷信が広まり、
ユダヤ教徒に対する嫌悪が蓄積され、社会に根付いていった
のです。
近世以降は、民族意識や人種の概念からの反ユダヤ主義が勃興
してきます。