フランスの地政学的な特殊性が大きく関係しています。
まず地理的な理由として、フランスは面積が広い割に、パリが政治・経済・文化の中心に極度に集中しています。パリを失うことは、単なる一都市の喪失ではなく、国家の統治機能そのものを失うということです。他の大国と違い、フランスには並ぶべき第二の中枢がありません。ロンドンやモスクワのように複数の主要都市が機能を分散させていないのです。
次に、フランスの国防戦略の問題があります。特に第二次世界大戦での敗北を見ると、マジノ線という固定防御に頼り、パリを奪われると戦略的な対応ができなくなる構造になっていました。つまり、パリの喪失が即座に国の統治能力の崩壊を招いたわけです。
さらにフランスの領土構造として、パリがシャンパーニュ地方やロワール川周辺など、歴史的に支配の中核となる地域に位置しているため、ここを押さえられると周辺地域への影響力も一気に減少します。
他の国では、ロシアは広大で複数の権力中枢を持ち、アメリカは地理的に遠く離れ、イギリスは島国という物理的防壁があります。フランスは「中央集権国家」としての強さが、同時に「首都喪失への脆弱性」という弱点になっていたのです。