昭和48年当時、年金額は毎年の物価上昇率に完全スライドでしたが、その後支給額の増大に保険料の伸びが追い付かなくなり、物価上昇よりその上昇率が低い賃金上昇に合わせることとし、さらに平成16年には、マクロ経済スライドという抑制指数を導入して一層年金支給額の伸びを抑制することになりました。
マクロ経済スライドというのは、経済とは直接は関係のない、平均余命の伸びや年金被保険者数の伸びなど年金財政にとってマイナスになる要素で、これを考慮することで年金支給額の伸びを抑える厚生労働省の奥の手ともいえるでしょう。
このため、例えば令和8年も本来物価上昇率が3.2%あるのに、年金支給額の伸びは1.9%程度に抑制されています。この悪魔の指数導入から10年近くなりますが、あなたがご心配のように、年金支給額は物価上昇にとてもじゃないが追いつかない事態がずっと続いています。毎年1%ずつ引き下げていれば単純に10年で1割減るわけですから、その効果は大きいと存じます。
しかしながら厚生労働省もマクロ経済スライドの欺瞞性については自覚していて、この指数で年金額を未来永劫調整するのはむつかしいと考えており、一応2036年には、厚生年金と基礎年金両方でこの数字による調整を終了する計画を審議会や国会で説明しています。
だからと言って年金支給額がかつての物価上昇率の完全スライドに戻ることは考えられず、ほかの手段での抑制を図ると考えられますが、それでもいたずらな抑制は多少緩和される可能性も無きにしも非ずかもしれません。
厚生労働省の役割は、一人一人の年金支給額をそれぞれの満足のいくところで実現することより、年金制度自体を少なくとも5年ごとの財政検証から少なくとも100年維持することですから、そのハンドルは慎重なものにならざるを得ないのかもしれません。