<正論>戦後80年、核の議論から逃げるな
元陸上幕僚長・岩田清文
2025/8/25 8:00
https://www.sankei.com/article/20250825-LGQ25JTWL5LMTGLVK3WLFUVS7M/
どれほど核廃絶を唱え続けても、核弾頭が増加しているのが現実の世界である。
使用可能な核弾頭数は2018年以降増加に転じ、世界全体で9615発となった。
この7年間で北朝鮮は35発増やし50発、中国は360発増の600発保有するに至った。
■台湾有事で核使用の危険性
この中国の急速な核弾頭増加の背景に、核政策変更の可能性があることが指摘されている。
カーネギー国際平和財団のトン・ジャオ氏は、核兵器の先制使用を抑制してきた中国で、核兵器の攻撃下発射(LUA=Launched Under Attack)政策(敵からの核攻撃を検知した場合、直ちに核報復を開始)を取る準備が進行していることを指摘した(2025年8月5日、フォーリン・ポリシー=FP)。
また米マサチューセッツ工科大のビピン・ナラン教授とNSCのプラネイ・バディ氏は中国、ロシア、北朝鮮のうち少なくとも2カ国が連携して米国の核抑止力を無効化した上で、通常戦力による侵略を可能にする危険性を指摘している。
併せて米国が戦後初めて複数の核武装大国から同盟国を守る困難性に直面していることを説明している(2025年6月24日、フォーリン・アフェアーズ=FA)。
この危険性・困難性は台湾有事で深刻である。
2022年にNBCの番組「ミート・ザ・プレス」と共同で新アメリカ安全保障センターが実施したウォーゲームでは、急速に核兵器の使用までエスカレートすることが示された。
さらに昨年2024年12月、米国防総省は中国の軍事・安全保障動向に関する年次報告書で
「(中国は)台湾での軍事作戦で敗北し、中国共産党体制の存続が脅かされる場合は、核兵器の先制使用を検討するだろう」
と核使用の可能性を指摘している。
■国民の命を守る政治の責任
台湾有事の際、中国が日本を含む地域で核を使用する危険性が指摘される中、脅威から確実に我が国の安全を確保することは政治の責務だ。
にもかかわらず日本の政治も、そしてメディアも、現実から目を背け、核抑止に関する議論さえもしようとしない。
石破茂首相は2025年8月6日、広島平和記念式典で
「『核兵器のない世界』に向けた国際社会の取り組みを主導することは、唯一の戦争被爆国である我が国の使命」
と誓った。
核廃絶に向けた誓いは重要である。
しかし首相に求められることは核の脅威から日本を確実に守る抑止力、即ち
「2度と日本へ核を撃たせない」
態勢の強化だ。
この核抑止力強化のため日本の世論を主導していくことがトップリーダーの責務ではないのか。
安倍晋三元首相は2022年2月27日、
「我が国は米国の核の傘の下にあるが、いざという時の手順は議論されていない…国民や日本の独立をどう守り抜いていくのか現実を直視しながら議論していかなければならない」
とテレビ番組で述べた。
しかしその1カ月後、自民党は党の国防部会において核の議論を封殺してしまった。
他の政党でも同様である。
先月2025年7月の参院選で選挙公約あるいは政策集で、核抑止に関して具体的に記述している政党はごく一部でしかない。
これで国民の命を守るべき責任政党と言えるのか。
報道によれば、自衛隊と米軍が昨年実施した
「台湾有事」
想定の机上演習で、中国が核兵器の使用を示唆したとの設定に対し、自衛隊が米軍に
「核の脅し」
で対抗するよう求めたことが取材で分かった、とある(共同通信2025年7月27日)。
中谷元・防衛相はこの事実を否定しているが、日本として当然要求すべきことではないのか。
中国の核威嚇に日本が屈することがあってはならない。
■非核三原則の見直しは必至
このような日本の核抑止の要求にも応えるためなのか、トランプ米政権は、海上発射型核巡航ミサイル(SLCM―N)搭載艦の開発を進めており、2030年代の配備を予定している。
このいわゆる
「核トマホーク」
が搭載された潜水艦あるいは水上艦は、いざという時には日本を核の脅威から守る役割を期待できる。
核搭載艦配備に当たって、米国から核搭載艦の補給・整備、乗員の休養のため日本への寄港を求められた際、我が国の非核三原則のうち
「持ち込ませず」
は大きな障壁となる。
日本を守るための核搭載艦の寄港が認められない場合、米国が日米同盟そのものの意義を疑問視することは明らかである。
このようなことも想定した議論は最低限避けて通れない。
日本の政治リーダーとしての責任は2つ。
唯一の被爆国として核廃絶の理想を掲げ、日本の悲劇が2度と世界で繰り返されないよう核軍縮の重要性を主張し続けること。
同時に、迫りくる核の脅威の現実を直視して、核の議論から逃げず、日本へ2度と核攻撃をさせない強固な抑止態勢を構築することである。
原爆投下から80年が経つこの2025年8月、強く指摘したい。
<産経抄>オフレコなんて要らない
2025/12/22 5:00
https://www.sankei.com/article/20251222-HDU7O3SPFBKSRKQEH2UFHDPAIM/
この際、オフレコではなく、官邸でも国会でも核保有の是非を含む本気の安保論議を戦わせてもらいたい。
沖縄近海で、中国空母がこれみよがしに威嚇する今、タブーはもう要らない。
中朝露の脅威でも…核保有、議論すらタブー 官邸筋発言で波紋、与野党から交代求める声
2025/12/19 19:21
https://www.sankei.com/article/20251219-L4AAGJCPDFOI5DTBFSAREFWGGE/
日本に対する核の脅威が高まっているのは事実だ。
中国が保有する核弾頭数は約4年以内に1千発を超えるとみられている。
ウクライナ侵略を続けるロシアは核による恫喝を公然と行い、北朝鮮も核開発を急ぐ。
小泉進次郎防衛相は会見で、非核三原則を将来に渡って変更すべきでないかを問われ
「平和な暮らしを守るために、あらゆる選択肢を排除せずに検討を進めるのは当然のことだ」
と述べた。
将来的に
「核なき世界」
を目指すことと、当面の抑止力に関して現実的な議論を行うことは矛盾しないはずだ。
高市首相、非核三原則で「岡田克也外相答弁」継承表明 当時も有事仮定の質疑、意趣返しか
2025/11/26 17:46
https://www.sankei.com/article/20251126-M3UBW7OQIJA7VEUUDBRGRRJX54/
岡田氏は平成22年3月17日の衆院外務委員会で、自民党の岩屋毅氏の質問に対し
「あまり仮定の議論をすべきでないと思うが、緊急事態ということが発生して、しかし、核の一時的寄港ということを認めないと日本の安全が守れないというような事態がもし発生したとすれば、それはその時の政権が政権の命運をかけて決断をし、国民の皆さんに説明する」
と述べた。
この見解は自公政権にも引き継がれ、第2次安倍晋三政権下で答弁書を閣議決定し、岸田文雄首相も
「岸田内閣においても引き継いでいる」
と答弁した。
小泉進次郎防衛相も今月18日の記者会見で同じ内容を述べた。
この日の党首討論で高市氏は
「岡田外相の答弁はぎりぎりの決断」
「万が一そういう事態が起こったら、とういうことの中での答弁だったと思う」
などと述べた。
高市氏は皮肉にも、台湾有事の存立危機事態を巡り、岡田氏からの仮定の質問への答弁が国内外で問題視されており、同じく仮定を基に答弁した岡田氏の発言を持ち出すことで意趣返しをしたとも取られそうだ。
国会対策から「国是」に化けた「非核三原則」の欺瞞と限界
阿比留瑠比の極言御免
2025/11/20 1:00
https://www.sankei.com/article/20251120-RW5NLJF265PMFJI6IRKEHWQUC4/
そもそも政府はこれまで三原則の堅持を謳いながらも、米国が国内に核兵器を持ち込む場合もあり得ると答弁してきた。
民主党の鳩山由紀夫政権時の平成22年、当時の岡田克也外相は国会で、有事における核兵器を搭載した米艦船の国内寄港や米爆撃機の飛来について、次のように述べた。
「非核三原則をあくまで守るか、それとも国民の生命の安全を考えて異なる判断を行うかは、その時の政府の判断であって、今からそれを縛ることはできない」
国会で三原則の堅持を明言しなかった高市首相を厳しく追及した岡田氏自身、現実的には例外があることを認めているのである。
そして、これはその後の政権も引き継いでおり、だからこそ、高市首相はこの問題をタブー視せず、平時から議論しておいて、国民に見解を示すべきだということを首相就任前から訴え続けてきた。
■「持ち込む」が現実的
それにしても笑止千万なのが中国の反応である。
中国外務省の林剣報道官は14日の記者会見で、高市首相が三原則の堅持を明言しなかったことについて
「最近の日本の軍事、安全保障動向に対する重大な懸念」
を表明した。
林氏は、併せて日本政府高官が原子力潜水艦導入の可能性を排除しなかったことも
「国際社会に危険なシグナルを発している」
と非難したが、中国は核兵器も原潜も保有しているではないか。
相手を批判する論理の破綻は隠せないが、同類は日本の国会にもマスコミにもいる。