これは、「糸がその地点(点P)で、左右からどのように引っ張られているか」、あるいは「点Pが糸からどのような力を受けているか」を視覚的に表しているからです。
物理学における「張力」の性質を考えると、以下の3つのポイントで説明できます。
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1. 張力は「引き合う力」である
張力(Tension)は、糸のどの断面をとっても、その両側がお互いに引き合っている力です。
・点Pより左側の糸(AP間)は、点Pを左向きに引っ張っています。
・点Pより右側の糸(PB間)は、点Pを右向きに引っ張っています。
この「両側から等しく引っ張られている状態」を表現するために、逆向きの2つの矢印が描かれています。
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2. つり合いの状態を表している
この実験装置では、おもりによって糸全体に一定の張力 S がかかっています。もし点Pにおいて、右向きの力と左向きの力が違っていたら、糸はその場で動いて(加速して)しまいます。
図のように同じ大きさ S で逆向きの矢印が描かれているのは、「点Pにおいて力がつり合っており、糸が安定した状態にある」ことを示しています。
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3. 「境界」としての意識
この図でコマ(P)や滑車(B)は、糸の振動の節(ふし)になったり、方向を変えたりする「境界」の役割を果たしています。
・おもり側では、重力 mg によって糸が下に引かれています。
・その力が滑車を伝わり、水平部分の糸を右へ引く力となります。
・さらにその力がコマ(P)を右へ引くと同時に、コマから先の糸(AP間)をピンと張らせる力になります。
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まとめると:
この矢印は、「糸というものは、どの地点を切り取って考えても、常に両側から同じ力で引っ張り合っている」という物理的な性質を、計算や考察をしやすくするために描き入れたものです。