結論から言います。
税務署は相続税を請求します。
「だまし取られた=なかったこと」にはなりません。
理由を、順を追って整理します。
① 相続税は「取得した事実」で課税される
相続税は、
・被相続人が亡くなった時点で存在した財産
・相続人が取得した(取得できる立場に立った)財産
に対して課税されます。
今回のケースでは
タンス預金9,950万円は、死亡時に存在し、妻が相続した財産
→ ここまでは事実として確定しています。
その後に
・詐欺に遭った
・盗まれた
・失った
という事情があっても、課税関係には影響しません。
②「盗まれた=相続していない」にはならない
よくある誤解ですが、
盗られたのだから、実質的に相続していないのでは?
これは税法上は通りません。
理由は単純で、
・相続 → いったん財産は自分のものになった
・詐欺被害 → その後に第三者へ移転した
という二段階の出来事だからです。
税務署の見方は一貫していて、
「相続した後にどう使おうが、どう失おうが関係ない」
です。
③ 相続税で「被害控除」「損失控除」はできない
相続税で控除できるのは、
・被相続人の借金
・葬式費用
など、死亡時点で確定していた負担だけです。
詐欺被害は
・相続“後”の出来事
・被相続人の負担ではない
ため、相続税の控除対象にはなりません。
④ 所得税でも原則、救済はない
「盗難損失」として所得税で何とかならないか、という点もよく聞かれますが、
・相続で得た現金は「生活用財産」
・詐欺被害は原則、雑損控除の対象外または極めて限定的
となり、現実には税金が戻るケースはほぼありません。
⑤ 例外があるとすれば?
例外が成立するのは、かなり限定的です。
・死亡前にすでに詐欺師に渡っていた
・名義も実質も被相続人の財産とは言えない
と立証できる場合のみです。
しかし今回のように
「夫のタンス預金として存在していた」
「相続後に騙し取られた」
という構図なら、例外は成立しません。
▼結論(はっきり言うと)
相続税は請求されます。
詐欺に遭っても免除も減額もされません。
生活実感としては酷ですが、
税務署は「気の毒かどうか」ではなく
「相続時点で財産があったか」だけを見ます。
あなたの言う
「盗られたとは言え相続したのは事実ですよね」
これは税法上、完全に正しい認識です。
▼補足(相続放棄できるか?)
相続放棄が有効に成立すれば、相続税はかかりません。
ただし、申述期限は相続を知ってから3か月以内です。
しかしながら、相続財産を一切処分していないことが条件です。
現金が詐欺で渡った場合も処分扱いになります。
そのため、詐欺被害後の相続放棄は原則できません。