ご質問の内容から判断すると、原発巣がきれいに取り切れているのに、なぜ高悪性度だと抗がん剤が必要なのかという点に疑問を持たれているのだと思います。
まず理解していただきたいのは、『取り切れた』という意味です。
獣医師が取り切れたと言ったのは、肘にあった目に見える腫瘍を周囲の正常組織も含めてきれいに切除できたという意味です。
病理検査で切除断端に腫瘍細胞が残っていなかったということです。
しかしこれは、あくまでその場所から取れたというだけで、体全体からがん細胞が完全になくなったという意味ではありません。
肥満細胞腫の悪性度による違いを説明します。
低悪性度の肥満細胞腫は、比較的おとなしく、その場所にとどまっている傾向が強いです。
そのため原発巣を完全に切除できれば、それで治癒が期待できることが多く、追加治療が不要なケースがほとんどです。
ただし、高悪性度の肥満細胞腫は増殖スピードが速く、早い段階で血液やリンパの流れに乗って体の他の場所に転移する性質があります。
つまり、肘にシコリとして発見された時点で、すでに目に見えないレベルの微小転移が体のどこかに存在している可能性が高いということです。
獣医師が「高悪性度なので転移はある」と言ったのは、おそらく「転移のリスクが非常に高い」あるいは「統計的に転移している可能性が高い」という意味だと考えられますが、この表現が曖昧で齟齬を生む原因になっているかもしれません。
実際にCTや超音波検査などで転移が確認されたのか、それとも悪性度から推測される可能性の話なのか、年明けの相談で明確にする必要があります。
ここでまず考えなければならないのが、14歳という年齢です。
転移が前提、または転移の可能性が高い状況で抗がん剤治療を行っても、根治は困難です。
抗がん剤による延命効果は数ヶ月程度というのが現実で、予後良好とは言えません。
その間に嘔吐や食欲不振、倦怠感などの副作用が出る可能性が高く、高齢犬にとっては通院のストレスも無視できません。
抗がん剤で数ヶ月延命できたとしても、その期間を副作用で苦しみながら過ごすのであれば、本末転倒です。
治療の選択肢としては、
積極的に抗がん剤を投与する方法、
原発巣は取り切れているので症状が出るまで様子を見て緩和的にQOL重視で過ごす方法、
まずCTや超音波で実際に転移があるかどうかを確認してから判断する方法があります。
もし検査で転移が確認されていないのであれば、様子を見るという選択も十分合理的です。
年明けの相談では、転移の有無が画像検査などで実際に確認されているのか、抗がん剤治療による予想余命延長はどの程度なのか、無治療の場合の予後はどうか、抗がん剤の副作用の程度と管理方法、そして治療費の総額について、しっかり確認してください。
14歳という年齢を考えれば、延命よりも残された時間のQOLを優先するという選択は、決して間違っていません。
愛犬にとって何が一番幸せかを、冷静に考えて判断してください。