アメリカの伝統的な政策に回帰しています。
1823年、当時のジェームズ・モンロー大統領は、西半球はヨーロッパの干渉から解放されるべきだと宣言しました(モンロー主義)。初期のアメリカの外交政策は、広大な西半球で自国の利益を確保することに重点を置いていました。
エイブラハム・リンカーンとアンドリュー・ジョンソン両大統領の下で国務長官を務めたウィリアム・スワードはアラスカの購入し、グリーンランドの購入も提案しました。アメリカはパナマ運河建設に向けて長年にわたって取り組み、プエルトリコとキューバを占領し、バージン諸島を購入しました。アメリカの外交政策は長年、隣接する地域を守ることは当然という考えに基づいていました。
第2次大戦中にもアメリカは、当時のネルソン・ロックフェラー国務次官補(中南米担当)が主導した「半球防衛政策」に従い、西半球での利益を守ることに注力しました。グリーンランドを占領し、ブラジルとメキシコを連合国側に引き入れ、カリブ諸国にある英海軍基地の管理権を掌握するなどしました。
第2次世界大戦直後1946年にはハリー・トルーマン第33代大統領がグリーンランド購入を提案しました。当時の1億ドル(2025年時点では約20億ドルに相当)でデンマークに買収を打診したが拒否されました。
1977年、当時のジミー・カーター大統領がパナマ運河の領有権をパナマに返還することを決めました。アメリカはこれ以降、西半球を過去の政策の失敗という観点から捉えるようになりました。かつて戦略的・工学的な偉業とされていたパナマ運河建設は、アメリカの帝国主義を示す例として批判され、冷戦時代にグアテマラやチリのクーデターに関与したり、軍事力を誇示して交渉を有利に進めようとした20世紀初めの「砲艦外交」も過去の汚点とされました。こうした歴史の記憶から、アメリカの外交エリートたちは西半球への関与を控える道を選びました。
アメリカが中東や南アジアに気を取られている間に、敵対する勢力がその空白を埋めようと動き始めています。中国は2000〜22年で、中南米との貿易を35倍に拡大し、地域の多くの大規模経済にとって最大の貿易相手国となっています。そしてアメリカから約150キロしか離れていないキューバに情報収集施設を建設しました。
今では中国産の合成麻薬フェンタニルがメキシコからアメリカに流入し続け、過剰摂取により十数万ものアメリカ人が命を落としています。
西半球は戦略的に重要ではないどころか、アメリカの安全保障と経済の利益の中心であり、これらの利益はアメリカにとって、さらに重要性を増していきます。
トランプは米政府の目を再び西半球に向け始めています。これは、ジョン・クインシー・アダムズやリンカーン、セオドア・ルーズベルトといった歴代大統領が自明と見なしていたことでした。中国や国際犯罪組織といった敵対勢力の脅威が高まるなかで、トランプは西半球で自国の利益を守ることの重要性を改めて主張しているのです。