犬の狂犬病は、侵入後すぐに全身へ広がるのではなく、まず咬傷部位の筋肉内で限局的に増殖し、その後に末梢神経終末から神経内へ侵入して、軸索輸送で中枢へ向かってゆっくり移動します。
この「神経内を時間をかけて上行する」という性質が、潜伏期間が長く、無症状のまま進行する主因です。
中枢神経に到達して神経細胞内で増幅が進むと臨床症状が出現し、この段階に入ると免疫学的に排除することは極めて困難になります。
咬傷後の創部洗浄とワクチン接種(必要に応じて免疫グロブリン投与)が有効なのは、ウイルスがまだ創部周辺にとどまっている、あるいは神経内へ侵入していても中枢に達していない前・初期段階であれば、中和抗体や物理的除去によって感染成立を阻止できるためです。
対応はできるだけ早くが本質で、神経内での上行が進み中枢感染が成立した後では、介入効果は期待できません。