日本が助けられる技術や知見は山ほどあります。なぜなら、現在の中国が直面している惨状の多くは、日本が高度経済成長期に血を流しながら克服してきた公害問題そのものだからです。
日本もかつて、熊本や新潟の水俣病(水銀汚染)、四日市ぜんそく(大気汚染)、富山のイタイイタイ病(カドミウム汚染)など、経済優先の代償として国民の命が蝕まれる痛ましい経験をしました。
質問者様が仰るPM2.5についても、かつての東京の空はスモッグで真っ白でした。石原慎太郎元都知事がディーゼル車の排ガス規制に乗り出した際、ススの入ったペットボトルを振って見せたパフォーマンスは有名ですが、あの執念が今の日本の澄んだ空を作りました。
現在の日本には、工場の煙突から汚染物質を出さない排煙脱硫装置や、汚泥を浄化する世界最高峰の技術があります。しかし、中国でこれが普及しないのには、あなたが指摘された通り意識とコストの壁があるからです。
中国は現在、環境対策コストを削ることで安価に製品を輸出する環境ダンピングによって利益を得ている側面があります。
彼らにとって、環境投資は利益を削る邪魔なものという認識がまだ根強いのです。
日本が手を差し伸べるべきかという点ですが、偏西風に乗って日本に被害が及ぶ以上、これは「隣家の火事」ではなく自衛の問題です。
ただ、相手に改善の意志がない限り、技術を無償提供しても維持管理されず、日本の国益を損なう恐れもあります。
国際会議やNGOを通じた技術供与の枠組みはありますが、最終的には中国が「国民の命を守ることは、長期的には経済利益よりも価値がある」と気づくかどうかにかかっています。
日本にできるのは、成功モデルとしての知見を提示し続けることまでかもしれません。
日本は技術だけでなく、公害による健康被害の救済制度や環境基本法といった、法整備や社会の仕組みの失敗学を伝えることができます。
助けてあげるという慈善の精神ではなく、日本の空と海を守るための「戦略的投資」として技術協力が必要である、という現実的な着地にするのも一案です。