ベンゼン環の安定性をエンタルピー変化の観点から説明します。
■共鳴安定化エネルギー
・ベンゼン(C6H6)の水素化熱を測定すると、予想より小さい値が得られます
・シクロヘキセン(二重結合1つ)の水素化熱は約-120 kJ/mol
・単純に考えると、二重結合3つを持つベンゼンの水素化熱は-360 kJ/mol程度と予想されます
・しかし実測値は約-208 kJ/molで、約152 kJ/mol分だけ安定化しています
・この差が「共鳴安定化エネルギー」または「芳香族安定化エネルギー」と呼ばれます
■安定性の理由
・ベンゼンの6個のπ電子は環全体に非局在化しており、特定の炭素間に固定されていません
・この電子の非局在化により、エネルギー的に低い安定な状態になります
・単純な二重結合3つの構造(ケクレ構造)よりも実際のベンゼンの方がエンタルピーが低く、より安定です
■実用的な意味
・この安定性により、ベンゼンは付加反応よりも置換反応を起こしやすくなります
・芳香族性を保つことでエネルギー的に有利な状態を維持します