一般に、指名手配犯が長期間発見されない理由は、単一の要因ではなく、いくつかの現実的な事情が重なっている場合が多いと考えられます。
ご質問の八田與一についても、同様の観点から整理することができます。
まず、偽名を用いて「普通に就労している」ケースは、現在の日本ではそれほど容易ではありません。
多くの正規雇用では、雇用契約時に住民票記載事項証明書やマイナンバー、健康保険、年金の手続が必要となり、これらは実名と戸籍情報に基づいて管理されています。
そのため、完全な偽名で継続的に正規就労することは、実務上かなり困難です。
一方で、可能性として現実的なのは、身元確認が比較的緩い形態での就労です。
例えば、日雇い労働、短期アルバイト、現金払いの仕事、個人事業者の下での手伝いのような形であれば、厳密な本人確認が行われない場合があります。
また、住所不定の状態で職を転々とすることで、特定されにくくなることも考えられます。
この場合、「偽名を使っている」というより、「本名を明かす機会自体を極力避けている」という方が実態に近いこともあります。
次に、ご指摘のとおり、第三者による匿いも十分に考えられる要因です。
親族、知人、あるいは過去に関係のあった人物が、住居の提供や生活費の援助を行っている場合、本人が外部と接触する機会は大きく減ります。
その結果、目撃情報が出にくくなり、捜索が長期化することがあります。
匿う側にとっては犯人蔵匿罪などの法的リスクがあるため常に起こるわけではありませんが、実際の捜査事例では完全には否定できない要素です。
さらに、現代では都市部での匿名性も無視できません。
人の入れ替わりが激しい地域では、多少外見が変わっていても周囲に強い違和感を持たれにくく、防犯カメラに映っても本人確認に直結しない場合があります。
加えて、本人が極力人目を避け、行動範囲を限定して生活していれば、発見の難易度は高くなります。
以上を踏まえると、「偽名を使って堂々と働いている」というよりも、身元確認を伴う場面を避けながら、不安定な就労や支援に依存して生活している、あるいは誰かの庇護下で潜伏しているといった複数の可能性を組み合わせて考える方が、現実には近いと言えるでしょう。