首相の「台湾有事」答弁 中国の「不都合な真実」
正論2026年2月号 麗澤大学教授 八木秀次
高市早苗首相の国会での「存立危機事態」答弁(2025年11月7日、衆議院予算委員会)について、事前に内閣官房が作成した応答要領の資料が明らかにされた。
そこに
「台湾有事という仮定の質問にお答えすることは差し控える」
と記されていたとして、一部の野党やメディアが首相の責任を殊更に問題視しようとしている。
例えば
「首相個人の判断で従来の政府見解を踏み越えて持論を展開したことを政府側が公式に認めた格好となり、日中関係悪化の原因となった答弁をした首相の責任も改めて問われそうだ」
(朝日新聞、2025年12月13日付)
といった具合だ。
記事中では、この件について質問主意書を提出し、資料の開示を受けたという立憲民主党の辻本清美参院議員が、
「(今回の応答要領で)首相の答弁は昔からの持論を展開してしまったということになる」
「対中関係の経済的損失、軍事的緊張を生み出してしまった責任は首相個人にあることがはっきりした」
とする発言が引用されている。
国会での首相発言が「個人」の判断や持論であるわけがない。
どんな内容であれ、首相発言は「政府見解」となる。
応答要領は参考資料に過ぎず、仮に首相が従来と異なる発言をした場合には直ちに訂正や撤回が必要となるが、そのようなことにはなっていない。
しかも、高市早苗の「存立危機事態」発言は従来の政府見解とを踏み越えたものでもない。
確かに、平成27年9月、安倍晋三内閣の下で成立した安全保障関連法で集団的自衛権の限定行使を可能にした際、存立危機事態として例示したのは、朝鮮半島やホルムズ海峡での機雷設置だった。
しかし、「台湾有事」は「暗黙の了解」の事例だった。
理屈の上では当然、想定されていた。
中国を刺激せず、粛々と日米同盟強化と抑止力向上を図ろうとの意図からだった。
高市首相の答弁はその「暗黙の了解」を言語化したに過ぎない。
朝日新聞は首相答弁を「不用意」「軽率」「政府見解を踏み越えた持論」などとして撤回を求める。
朝日新聞以外からもそんな声は上がる。
しかし、撤回は安保法制を否定し、有名無実化を意味する。
日米同盟の弱体化にも繋がり、台湾への武力侵攻をも辞さない中国にとっては都合がよい。
辻本清美氏はここ最近の対中関係悪化による経済的損失、あるいは軍事的緊張を高市首相の個人的責任と批判する。
如何にも中国政府が歓迎しそうな論理だ。
日本国内でこの手の批判が高まり、首相が万が一にも発言を撤回し、あるいは今後、委縮して同様の発言を差し控え、あわよくば「高市降ろし」にでも発展すれば、対日批判を強め、経済・軍事両面で日本を威嚇した甲斐もあったというものだ。
今回、中国が高市首相答弁を殊更に問題視するのは何故か。
米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」が2023年初めに公表した台湾有事を巡る軍事シミュレーション(机上演習)によると、24通りの「台湾有事」シナリオのうち、中国が台湾全域の占領に成功したケースは、2通りしかなかった。
1つは米軍が不介入の「台湾単独シナリオ」。
台湾もさすがに単独で戦えば中国に敗れる。
もう1つは、米国は台湾を守るべく来援するが、日本は集団的自衛権を行使しない、つまり自衛隊が米軍を支援しない「日本中立シナリオ」だ。
高市首相の答弁は、中国の台湾侵攻が成功し得るとされる数少ないシナリオの1つ「日本中立シナリオ」を明確に否定し、自衛隊が米軍に対して集団的自衛権を行使する可能性を、現職首相として初めて明言したものだった。
高市首相は習近平執行部にとって悲願の台湾統一について、公然とそれを阻止するとの意志を国内外に示したのだ。
中国からすれば見たくない不都合な真実を突き付けられたとの思いだったろう。
中国との確執は長期戦となる。
避けなければならないのは、相手の心理戦に乗せられて日本国内が動揺し、首相をはじめ国内に責任を求めることだ。
隣国のやり口を理解した上で、経済での依存度を低め、経済安全保障や防衛体制を強化するなど、国家としての体質改善を図ることが必要だ。
幸い、日本国民は呑気な対中認識を変えざるを得ないと気付き始めている。
無礼千万! 今日の友好、明日は制裁
WiLL2026年2月号 元産経新聞社会部記者 三枝玄太郎
アメリカと台湾だけなら、中国は電撃戦で早期に台湾を制圧できると踏んでいるかもしれません。
しかし、そこに自衛隊が加わるとなれば、兵力の量と展開速度の面で戦況は大きく変わる可能性があります。
だからこそ、中国は
「日本だけは台湾問題に関与させたくない」
という強烈な政治的動機を持つのです。
その中国の思惑に立憲民主党、れいわ新選組、日本共産党が結果として与してしまい、高市批判を展開している。
この構図こそ、国益を損なう最大の問題です。
中国が台湾周辺海域で実弾射撃や港湾制圧訓練、軍事演習2日目 「米の武器売却に反撃」
2025/12/30 20:13
https://www.sankei.com/article/20251230-XQLSPJYWHBKVXCKTQ2SNQUMN3Y/
中国人民解放軍で台湾方面を管轄する東部戦区は30日、台湾を包囲する形の海空域で2日連続となる軍事演習を行った。
30日には台湾の周辺海域に対する実弾射撃や、重要港湾の制圧といった訓練を実施した。
「台湾独立派」と敵視する民主進歩党の頼清徳政権に圧力をかけると共に、台湾への大規模な武器売却を決めたトランプ米政権に対し台湾問題で譲歩しない姿勢を示した。
■東部先駆「期待通りの成果」
実弾射撃は、陸軍部隊が台湾の北方と南方の海域に対して実施したと発表。
東部戦区は30日、陸上から長距離ロケット砲を次々と発射している動画を公開した。
東部戦区は、実弾射撃について
「期待通りの成果を収めた」
としている。
重要港湾の奪取・制圧訓練は、台湾の東方海域で強襲揚陸艦などの艦隊のほか無人機を動員して実施した。
30日には、台湾の南北の海域で、駆逐艦や爆撃機などを動員し模擬攻撃や対空・対潜作戦などの演習も行った。
■弾道ミサイル発射は未確認
東部戦区は、30日午前8時から午後6時(日本時間同午前9時から午後7時)に実弾射撃を伴う
「重要軍事演習」
を行うと予告。
台湾の周辺5カ所に設定した区域の座標を公開し、船舶や航空機が進入しないよう警告していた。
2022年8月の演習では弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)にも着弾して地域の緊張が高まったが、今回は弾道ミサイルの発射は確認されていない。
東部戦区は29日に「正義の使命―2025」と名付けた軍事演習を始めた。
台湾を包囲する形の大規模軍事演習を行うのは今年4月以来。
陸海空軍と戦略ミサイルを運用するロケット軍を動員した。
中国外務省によると、王毅共産党政治局員兼外相は30日、北京で開かれたシンポジウムで、米国による台湾への大規模な武器売却に対し
「断固として反対し、力強い反撃を行う」
と述べて対抗姿勢を示した。
30日の中国軍事演習で国際線の10万人超に影響へ 台湾当局「国際規範への重大な違反」
2025/12/29 22:07
https://www.sankei.com/article/20251229-VWAP7HAQUZJGBD2F7PGOEOSYM4/
中国軍が29日に開始した台湾周辺での軍事演習を巡り、台湾の交通部(国土交通省に相当)民用航空局は29日、中国当局が30日に
「ロケット発射演習」
を行うとして飛行禁止エリアを設定したことにより、台湾発着などの国際線計857便とその乗客10万人超に影響が出ると発表した。
民用航空局は、軍事演習により航路に影響が出る場合、遅くとも7日前の通知を国際民間航空機関(ICAO)が規定していると指摘。
「中国が僅か1日前に通知したことは国際規範と航行の慣例に重大に違反している」
と非難した。
同局は、中国側が30日午前8時(日本時間同9時)から同日午後6時(同7時)まで台湾周辺で7カ所の進入禁止エリアを設定したことにより、東北方向の日本と往復する航路を除く国際航路が全て利用できなくなると指摘。
代替航路の設定などにより対応するものの、フライトの取り消しや遅延が発生する可能性があるとした。
台湾「国際秩序に挑戦」と軍事演習非難 中国軍新任司令官の「能力テスト」との見方も
2025/12/29 20:00
https://www.sankei.com/article/20251229-UQPKX4VPOBNZXKFJLJLQJYDZUU/
中国軍が台湾包囲の軍事演習、米国の台湾武器売却に対抗か 「台湾武装で危険な状況に」
2025/12/29 19:55
https://www.sankei.com/article/20251229-D424I5V5ABLFTCUUOPBJQ4OWXU/
中国軍拡、圧倒的早さ 迫る「2027台湾有事」日本の備えは
戦間期の終焉 第5部・「日本」を守れるか(上)
2025/12/21 7:00
https://www.sankei.com/article/20251221-RDVOPQXVQ5LYJOVV6XFIB6Z2PM/