keine は「nicht + ein の複数形」ではありません。
kein は「不定冠詞 ein の否定形として振る舞う語」だからです。
まず、ein / eine の性質から確認します。
ドイツ語では、
・不定冠詞 ein / eine は単数にしか存在しない
・複数には「不定冠詞そのものが存在しない」
つまり、
・ein Apfel(1つのりんご)
・Äpfel(りんご[複数])← 冠詞なし
という構造です。
次に、kein の正体。
kein は、意味的には
「nicht + ein(1つも〜ない)」
に相当しますが、文法的には ein と同じ活用をする限定詞です。
そのため、
・性・数・格に応じて
・ein と同じ語尾変化を取る
という振る舞いをします。
ここで重要なのが、
「ein がないところに、kein が現れる」
という原則です。
つまり、
・ein Apfel → kein Apfel
・eine Idee → keine Idee
・Äpfel(不定・複数) → keine Äpfel
複数にはもともと ein がありませんが、
否定するときには「ゼロ個である」ことを示す必要があるため、
そこで kein が複数形として使われるのです。
では、なぜ nicht Äpfel ではダメなのか。
nicht は
・動詞
・形容詞
・副詞
・文全体
を否定する語で、
名詞そのものを限定的に否定する働きは弱いです。
例を比べると、
Wir haben Äpfel gekauft.
→ Wir haben keine Äpfel gekauft.
(りんごを1つも買わなかった)
Wir haben nicht Äpfel gekauft.
→ 「りんごではなく、別の物を買った」
という対比・修正の意味になります。
つまり、
・kein は「数量ゼロ」を名詞に直接与える
・nicht は「文の内容」を否定・修正する
という役割分担があるわけです。
質問の文について。
1 Wir haben keine Äpfel gekauft.
これは、
・Äpfel が不定・複数
・「1つも買っていない」という数量否定
を表すため、
keine + 複数名詞
という形が最も自然で、かつ文法的に正しいのです。
一言で言えば、
keine Äpfel は
「ein Apfel すら存在しない」という発想の複数否定
なのです。