犬の胃拡張捻転症候群(GDV)におけるH2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬(プロトンポンプ阻害薬:PPI)の役割は、発症そのものの予防効果は確立していないが、術後管理においては合併症リスクを軽減する補助的役割を持つという位置づけになります。
GDVは胃の過拡張と捻転によって胃壁の虚血・再灌流障害が起こる急性疾患であり、病態の中心は胃内圧上昇と血流障害です。
このため、胃酸分泌そのものは発症機序の直接因子ではなく、H2ブロッカーやPPIによる酸分泌抑制がGDVの発症リスクを直接下げるというエビデンスは現在のところ確立されていません。
術後の管理においては状況が異なります。
GDVの整復や胃固定術後は、胃粘膜が虚血や伸展によるダメージを受けていることが多く、胃酸による二次的な粘膜障害が潰瘍形成や出血リスクを増加させる可能性があります。
このため、H2ブロッカーやPPIは胃酸分泌を抑制することで、胃粘膜保護作用を補助し、術後のストレス性潰瘍や出血性胃炎の予防・軽減に寄与する目的で使用されます。
術後は全身状態の変化や循環動態の不安定さから胃粘膜の防御機構が低下しているため、胃酸の影響が通常より強く出やすい状態にあります。
そのため、酸分泌抑制薬は胃の構造的問題ではなく、粘膜保護と二次障害の予防という補助的な役割として位置づけられます。
H2ブロッカーやPPIはGDVの予防薬ではなく、術後における胃粘膜障害やストレス性潰瘍のリスクを軽減するための支持療法として用いられるものであり、主たる治療や再発予防の中心はあくまで外科的固定と食餌・行動管理にあります。