96陸攻の優秀さも一つの要因ではありますが
それが全てではありません。
同じ時期のイギリスの双発爆撃機ブリストルブレニムやブリストルボーファイターと比較してどれくらい優秀だったか、といえば一長一短、どちらが絶対に上、
と言うような差はありません。
イギリスはヨーロッパの国ですから想定した使用環境では、航続距離に対する要求はあまり強くありませんでした。たとえば、イギリス本土からフランス全土は1000kmの圏内ですし、ロンドンベルリン間は900kmです。
96陸攻は「渡洋爆撃」の名で有名になったように、九州(長崎)や台湾を飛び立って南京など中国内部の都市を爆撃してました。片道1000kmは珍しくなく、中には1500kmに近い目標もありました。
日本海軍の「中型攻撃機」はもともと太平洋上の島を飛び立って、日本に向かって攻めて来るアメリカ太平洋艦隊を洋上で雷撃する事を目的に開発され、航続距離が長く、海面近くまで降下して低空飛行で敵艦に迫って魚雷で攻撃する訓練を烈しくやっていました。
マレー沖海戦のイギリス東洋艦隊の戦艦2隻を「アジア人である日本人を舐めて甘く見て油断していた」という書き方をしている戦記を見る事がありますが。
「アジア人だから馬鹿にしていた」てはなく、国境を接したヨーロッパの感覚では最寄りの基地から1000kmも沖合まで航空機が魚雷を持って雷撃に飛んでくることは想定外だった、と言われます。
事実、艦隊司令官のフィリップ中将はシンガポール在の空軍に対し戦闘機による援護を何度も依頼しています。日本人を舐めきっていたのなら戦闘機の援護は不要、と気にしなかったと思われますが。この時代の常識ては洋上を動き回る艦船に対する爆撃の命中率は非常に低く、日本の爆撃機が飛んできたとしても大した被害は無くやり過ごせる、と考えていたと言われます。
つまり、マレー半島沖合まで日本の航空機が飛んで来る可能性はヨーロッパの常識から考えて低く、仮に現れても洋上を走り回る艦船に対する爆撃の命中率は低いのでそれほど心配する事は無い、と判断していた、と言われます。
既に書いた通り、日本海軍の中型攻撃機は遠距離の敵艦を魚雷で攻撃する事を重要な任務として激しい訓練を重ねていました。双発の、機体が海面上数メートルまで降下して迫って来て、魚雷を投下した後、艦上をぶつかるギリギリの、高度で飛び越える日本の攻撃機に肝を冷やした、という記録があります。
96陸攻の性能は航続距離は別として、爆弾搭載量や最高速度などはイギリスの同クラスの双発爆撃機と比較して突出して優秀というほどではありません。洋上の遠距離雷撃を想定して猛訓練を
重ねてきた96陸攻の搭乗員達が優秀だった、というべきでしょうね。