元々は人間さま用の露天風呂に猿が入ったことが始まりなんです。
昭和中期に、地獄谷の野猿たちが里に下りてきて作物を荒らすので農家が困っていることを知った温泉旅館の館主が、里に下りてこないよう猿たちにリンゴを餌として与えていたそうです。
あるとき館主が投げたリンゴが露天風呂の中に転がり、それを見ていた一匹の子猿が向こう水にも風呂の中に飛び込んでリンゴを拾った…というのが、今や世界に知られる「スパモンキー」の起源だそうです。普通は猿は水場をおそれてその中に飛び込んだりしないのですが、子供なのでそのあたりの分別がまだ無かったのでしょう。
その子猿が仲間の子猿を誘って露天風呂に入るようになり、彼らがおとなになると我が子を風呂に入れるようになって、世代が下るごとに風呂に入る個体が増えていった、という経過をたどっています。
人間さま専用の露天風呂に偶然猿が入ったのが最初なんですよ。
まったくの自然の状態で、温泉が湧いている場所に適度な広さと深さをもった適温の湯溜りが出来るなんてこと、普通に考えてまずあり得ない話です。人間用に適温に調整された露天風呂に、猿が勝手に入りに来たものなんです。
偶発的にごく少数の猿が露天風呂に入りに来るうちはまだよかったんですが、仲間が増え日常的に猿が入りに来るようになると、本来は人間用の浴槽ですから当然のこととして衛生面での問題が出てきます。また旅館としては客が不用意に猿と接触することで、どんな不測の事故が起きるか分からないという不安もありました。
そこで地元の長野電鉄が旅館の敷地外に猿専用の露天風呂を設けて、「地獄谷野猿公苑」という観光施設として整備して現在に至ります。
現在は旅館が管理する人間用の露天風呂と、野猿公苑内の猿専用の露天風呂は完全に分離されているんですが、どちらも風呂は風呂で、あそこの猿たちは人馴れしていて人間を全然怖がらないので、旅館の露天風呂にも頻繁に出没しているみたいです。
この旅館に泊まった多くの人が「お猿さんと混浴体験」したことをブログ、SNS、動画サイトにUPしていて、検索するとその種の記事が山ほど出てきます。
しかし、アイツら、野生の猿で本当に汚いですからね。風呂の中で平気でウンチしますから。風呂の中で粗相しちゃいけません、という躾を受けていないので仕方ありません。
旅館としては衛生管理上の重大な懸念材料なので、人間さま専用の風呂にやって来る猿は追い払うべき対象なのですが、客は猿との混浴などここでしか体験できないと大喜びなのでそう邪険にもできず、痛し痒しという状況のようです。