慢性疾患を持つ犬では、治療薬の種類や用量を変更していないにもかかわらず、ある時点から副作用と思われる症状が新たに出現することは少なくありません。
これは薬が変わったから起こるのではなく、犬の体の状態が変化したことで、同じ薬に対する反応性が変わるために生じます。
主な要因として、まず基礎疾患の進行が挙げられます。
例えば慢性腎臓病(CKD)が進行すると腎機能が低下し、薬剤の排泄能力が落ちるため、体内に薬が蓄積しやすくなります。
また肝疾患の進行では薬物代謝能力が低下し、同じ用量でも血中濃度が上昇することがあります。
このように、臓器機能の変化によって薬剤の体内動態(吸収・分布・代謝・排泄)が変わり、結果として副作用が顕在化します。
加齢による生理機能の低下も重要な要因です。
高齢犬では肝腎機能の予備能が減少し、若い頃には問題なく使えていた薬でも、年齢を重ねるにつれて負担となることがあります。
体重や体組成の変化(筋肉量減少、脂肪量増加など)も薬物分布容積に影響し、実質的な薬剤濃度を変化させます。
併存疾患の発生や多剤併用による薬物相互作用の変化、栄養状態や水分バランスの変動、個体の薬剤感受性の経時的変化なども、副作用出現に関与します。
慢性疾患では複数の薬剤を長期間使用することが多く、それぞれの薬剤が相互に影響し合う可能性も考慮する必要があります。
長期治療中に新たな症状が出現した場合は、まず副作用の可能性を疑い、血液検査などで腎機能・肝機能・電解質バランスなどを再評価することが重要です。
必要に応じて薬剤の減量、投与間隔の延長、代替薬への変更を検討します。
慢性疾患の管理では、定期的なモニタリングを通じて犬の状態変化を早期に把握し、治療内容を適宜調整していくことが、安全で効果的な長期管理につながります。